【記事】 ウィリアムズ症候群
浮遊雲日記

04年07月06日(火)
19:31
曇りのち晴れ 賢くっても邪悪な奴はダメさ
世の中にはいろいろな病気の人がいて、
それはメジャーなものから全く聞いたこともない病気まである。
また自分が生きて来た中でさまざまな病気の人に遭遇することもある。
今までさまざまな病気の人に出会い、また同じクラスや同じ職場になったこともあった。
子供にとって、特殊な相手とどう付き合うのかというのは非常に難しいことではあったのだが
その子やその子をとりまく人々の接し方を見ることは結構いい「人間観察」になっていた。
特殊である子を差別しないことは当然ではあるが、
そういう子を何の違和感もなく、偽善でも何でもなく自然に受け入れられる子も中にはいて
オリはそういう子を尊敬したし、その心の広さがすごくうらやましくもあった。

実は以前のバイト先に、ずっと気になっていた女の子(A子)が1人いた。
昔バイトしていた時のオリのデスクの後ろは総務課で、経理バリバリのオバさんが座っていた。
そのオバさんはよくそのA子を叱っていた。
「何度言ったらわかるの!」「どうしてまたこんなミスをするの!」「あなたバカじゃないの!」などと
それはそれはヒステリックに怒鳴ることが多く、
どうも同じミスや信じられないミスを繰り返しているらしかった。
しかもその子はこっぴどく叱られたあとでもいつもニコニコと明るかった。
それが余計「全く反省の色がない、やる気がない」ように映り、
オバさんの神経を逆なでして、ますます激怒させているようだった。
あまりにもひどいミスとそのニコニコに、その経理のオバさんは
経理とは全く関係のないオリにいつもこぼしていた。
「んも〜、なんなのあの子! 私疲れちゃうわよ〜。」「あたしもう嫌っ!」
と幾度となく愚痴るオバさんに対し
「まあまあまあ(←たしなめる)」「大変だね〜」と一応声をかけてあげてはいたのだが
あまりにも続くありえないミスの連続と、叱られた後もケロっとしてニコニコとする態度には、
「この子、ちょっと尋常ではないな」と内心思っていたのだった。
かつて学生時代にクラスメートに知的障害者がいた経験から、オリとしては
「もしかしてこの子、境界線(知的障害の1歩手前)の子なのかな?」と疑っていた。
人には得意不得意の分野があり、大なり小なり能力の差があるものだ。
しかし、もともと知能が劣っている子にとっては、
出来ることの許容範囲や限界というものはおのずと出て来る。
限界があるなら出来る範囲のことを辛抱強く繰り返しやらせるしかないのだが
相手が「自分と全く同じレベル」だと思いこんでいると、
自分に簡単に出来ることが相手には全く出来ないということでものすごく腹がたってしまうものだ。

おそらくヒステリー気味になっていたオバさんが何度も上司に抗議したのだろう。
あるいは仕事があまり出来ないということに上司もうすうす感づいていたのかもしれない。
A子はある日、別の系列の子会社に異動することが決まった。
仕事が出来なくて異動になったことは誰の目にも明らかなのだが
A子は「お世話になりました」といつも通りの笑顔でニコニコして去って行った。
もちろんオバさんが大喜びしたことは言うまでもないのだが
およそ悪意のない笑顔で去って行ったA子を見ていたらなんだかすごく気の毒に思えて来た。
ちょっぴり能力が劣るだけで毎日鬼のように叱られ、遂に異動までさせられるはめになったけど
異動先でもまた怒られなきゃいいけど、とちょっぴり心配していた…。

そんなA子のことがなぜかなんとなくずっと心のすみに残っていたある日、
テレビ番組で「ウィリアムズ症候群」という病気の話が出て来た。
その症状を聞いていたオリは「あっ!!」と思った。
その病気の症状が、まさにA子の症状にそっくりだったからなのだ。
ウイリアムズ症候群の特徴とは、サヴァンなどのように遺伝子が欠けて出来る病気らしかった。

■顔の特徴:   広い額で小さな頭、上向きの鼻、鞍鼻、厚い唇、乱食いの歯、小顎
■体型の特徴: 撫で肩、首長、突き出たお腹、特徴的な歩行、身長が低い
■認識の特徴: 知的機能や理性や社会的行動および自立する能力においての欠如
■人格の特徴: 社交的、非常に人なつっこい、人を恐れない、話し好き、特定の話題に非常に熱中


子供の頃の症状などいろいろあるものの、代表的な特徴的な部分だけをピックアップしたが
以前テレビで見たのをかいつまむと、
運動能力と空間認知能力の著しい低下があるものの会話能力や言語能力にたけ、
音楽には異常な感心を示す。
風貌は、遺伝的なこの病気特有の特徴があり、顔の幅が狭く目がばっちりていて、
垂れたまぶたに横に広がった口と厚い唇をした愛らしい顔つきをしている。
白雪姫に出てくる小人達や童話に出て来る妖精というたとえもあるほどで
ウィリアムズ症候群は「妖精顔貌症候群」とも呼ばれているそうだ。
性格は人なつっこくて社交的で、人を疑うことを知らないピュアな心の持ち主。
そのため、人から傷つけられると悲しむが、人に対して悪意や敵意を持つことはないらしい。

A子はまさにその特徴的な風貌で、ちょっと小さめな体系とクリクリとした目と歯並びの悪い口。
叱られるととても悲しそうな顔をするが、すぐにいつもの人なつっこそうな顔つきでニコニコ。
ああ、A子はやっぱり「ウィリアムズ症候群」だったのかもしれないなと思った。
それもなまじ軽い症状だったからそういう病気と言わずに普通の会社に就職して
結局他の人に理解されずにただ「頭の悪い子」として片付けられてしまったのだろう。
きっと鬼のように怒っていたオバさんも、もし彼女がそういう病気だと知ったら
イラついたり愚痴はこぼすものの、あの鬼のような怒り方はしなかっただろう。
A子のあの邪心のない笑顔の理由がわかり、
なんとなく心の中に残っていた引っかかりがとれたような気がした。

彼女は今、またどこかで誰かにいじめられているんじゃないだろうかと心配しつつも
たとえ裏切られても傷つけられても、もともと人を愛する心の持ち主だから
またいつもの笑顔を人に向けているに違いない。
人に対して、心の壁を一切持たない人なつっこい「ウィリアムズ症候群」の人たちが
ちょっぴりうらやましくもあるような気すらするが
その大きな目でまっすぐとこっちを見ながら親愛をこめて近寄って来るその一途な彼女らを前にすると、
心に何かしらの壁を持つ我々は、きっと誰もがドギマギしてしまうに違いない。

世の中には、知能が高くても人を殺したり傷つけたりするようなとんでもない人間がいる。
そういう人間はたとえ遺伝子の数が正常でも「健常者」であったとしても、
こういう人たちの方がある意味「病気」であるとも言える。
たとえ知能が高くても、人に邪心や悪意しか持たないような邪悪な人間たちよりは
たとえ少々足りなくても、悪意敵意のかけらもない心優しい人間ばかり増えた方が
よっぽど世の中が良くなるのにと思ってしまうのだ。
比較の問題になってしまうのだが、
そう思うと、不謹慎ながらもなんだか「ウィリアムズ症候群」が素敵な病気に思えて来て
こうなると、「病気」として定義していいのだろうかとすら思ってしまう。

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コメント更新: 11年08月04日(木) 08:27 / 投稿数:2 / 参照投稿



【コメント】 ありがとう
09年04月25日(土) 16:27 − ぱおぱお 

友人にウィリアムズ症候群のお子さんを持つお母さんがいらして、今度その本を皆さんで出すそうです。読んでみてと言われて、読んだものの、どういうお子さんの特徴があるのか分からず、調べていて、このページに出会いました。

なんて温かな見方なんだろう、こんな方が周りにいてくださったのだから、A子さんもきっと幸せだっただろう。そう思える文章でした。私は精神障害者の、今はボランティア状態ですが、自分自身の偏見で家族を医療につなげない例を多く見ています。こういった温かな見方の方が増えたら、そんな余計な苦しみもきっとなくなっていくことでしょうと思います。「ホントにありがとう」

【コメント】 周知されるって大事、でも難しい
09年04月26日(日) 22:35 − ザキ 

以前、ウィリアムズ症候群のお子さんを持つ母親の方からコメントを頂いた事があります。
その子が社会に出てもやっていけるのかととても心配されていたようで、
オリのこの記事を読み、もしかしたらやっていけるのではと希望を持ったと書いてありまして
(掲載不許可のため載せていませんが)それを含めて、ぱおぱおさんにも感謝されると
当時何も出来ずにと言うか、ただ見ていただけの自分だったのにとても申し訳ない気持ち…

オリの場合は、たまたま番組を見てウィリアムズ症候群の存在と内容を知ったわけですが
どんな病気であれその病気の特性と接し方が理解されれば少しは違うのかもしれません。
一般の人は、単に無知なだけで性格が悪いわけではなかったり(多分)
あるいは、偏見の気持ちはないのだけど、そういう人との接し方がわからない、苦手…
と思っているからつい避けてしまうだけの人もいるんだと思いますが
子供でも大人でも、自然体で接する事が出来る人はいて、ぱおぱおさんのように
ボランティアされている方々って本当にすごい尊敬です。 が違うって感じ。

ちなみに、そのガミガミ怒っていた経理のおばさんですが、彼女はちょうどその頃
更年期障害に悩まされていたような感じだったので、彼女も別に意地が悪かったのではなく、
彼女自身も病気でイライラしていた事と、A子の病気を知らなかった事が重なったため
お互いが苦しい思いをする結果になったのかもしれません(でもA子なら許してくれそう)

オリが見たあのウィリアムズ症候群のドキュメンタリー番組(アメリカかどこかの外国)
調べてみたら、もしかしたら2003年のTBSの番組だったかも。
TBS、どうせ全般的に低視聴率なら、こういう番組こそ再放送すればいいのに。